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いわいレポート:第29回
潟}キオの牧尾社長にお会いする前、私は多少興奮しました。「一体どんな人なんだろう」と。「お客様に満足と安心を売る、利益を目的としない」と いう視点は私と同じようです。
しかしその後の手法は全く逆です。私は「企業を大きくするな、大きくする事は結局銀行に支配され、かつ目が届かなくなるから破綻する」と考えます。
しかし、牧尾さんは日本一の巨大スーパーを既に成功させている。問題点はここです。
牧尾氏はこの壮大な夢物語をどうやって銀行・投資家・仕入先を説得して資本を調達したか?です。恐らく大変情熱的で説得力のあるカリスマ性を持った人だろうと想像したのです。
ところがお会いしてみると失礼ですが拍子抜けしました。本当に田舎の商店のおっさんという感じなのです。成功者の気負いなど全くなく、ぼそぼそと私の質問に答えてくれます。
「どうしてこんな大きなスーパーを計画されたのですか」という私の質問に社長の回答は、要は「街の過疎化が急激に進み、生鮮三品の店や、電気・水道屋などが消えていく。これでは生活必需品全部を置かなければ街の人は生活出来ないと思い、調べてみたら20万点を超えて、どうしても大きな売り場面積が必要になった」という事です。
次に私の疑問は、通産省がなぜこの大きな店舗を認可してくれたか?です。
社長は笑います。「日参しました。最後は根気負けしたのでしょう。それにどうせ銀行が融資しないだろうと考えたのかも知れません」
その通り。私の一番大きな疑問は、なぜ銀行や投資家が賛成したのか?です。
“賛成するわけがない”これが私の常識です。しかし社長は通産省の認可を錦の御旗に銀行に日参します。やがて根負けしたのでしょう。20数行が一応内諾しました。
社長は直ちに山を削り整地にとりかかります。
ところが実際に借入申込をすると、各行が一斉に手を引いたのです。社長は既にゼネコンに手形を切っていたのです。青くなりました。
たまたま三井住友銀行の頭取が鹿児島に講演に来ました。社長は強引に面会を求め5分ほど会う事が出来ました。社長は必死で“住民救済の為どうしても必要だ”と説得します。頭取はいやな顔をして聞いていました。会見は5分ほどで終わり、頭取は席を立ちました。田舎のおやじの夢物語と思ったのでしょう。しかし“地域の住民を救いたい”という一念は何か引っ掛かるものがあったのでしょう。
鹿児島支店長に「阿久根にこんな変な親父がいるが一応会ってみたらどうか」と電話しました。
やがて鹿児島支店長が尋ねて来ました。社長はまた必死で口説きます。
支店長も頭取同様、嫌な顔をしていたそうです。しかし支店長も帰ってから何か引っ掛かるものがあったのでしょう。“住民を救いたい”という社長の一念です。銀行の融資はとうてい無理だが、投資会社ならどうかと思ったのです。関連投資会社に声をかけたのです。
やがて投資会社が調査に来ました。投資会社も最初は呆れた顔でしたが、やがて社長の一念に押されて「ひょっとしたら化けるのではないか(万一成功して上場でもすれば大変な儲けになる)」と考えたようです。
ついに数社の協調で当初の投資が決定したのです。
牧尾社長の信念は「自分の生れ育った街を守る、住民を守る」ただこの一点です。損得などありません。しかしこの情熱が色々利害の異なった人々を動かしてきたのです。
「金もいらず、名もいらず、命もいらぬうつけ者(変人)は誠に困り者なり。しかしこのうつけ者なくして国の大事は成り立ちがたし」西郷隆盛の言葉と思いますが、鹿児島という地はこうしたうつけ者を生む風土なのか。私は呆然として牧尾社長を見上げました。(つづく)
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