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2007年9月28日:東京本社

自分のお金



東京

 花森安治と言えば、『暮しの手帖』の名物編集長として知られています。生前の彼が同誌の59号(1961年5月)に、こんなコラムを書きました。

 

「家計上手のコツのひとつは、『現金買い』、これは常識である。お帳面(補記・後払い)だと、手許にゼニがなくても、つい、買ってしまう、いきおい、ムダな買い物をしやすいからである。

 ……あれもほしい、これもほしい、しかもゼニのほうは限られているからこそ、家族会議を開いて、討論する。そのあれもこれものなかで、さしあたってなにを買うか、これは真剣である。いろんな角度から、いろんな考えが出てきて、とどのつまり、今度はこれを買おう、あとはつぎの機会に、ということになる。

 それだけに、買うときも必死である」

 

 そこで、お金を用立ててくれる人が現れたらどうでしょうか。得てして、人は誘惑に弱いもの。金遣いに歯止めが利かなくなりがちです。

 

 花森は個人について書いているのですが、これは会社にもあてはまることでしょう。

 手持ちの資金だけでは足りないから、銀行に資金を借ります。ところが、銀行に勧められて、余分なものにまで手を出してしまう。ゴルフ場の会員権、不動産、株式、過剰な設備……。金の使い方も雑になります。

 

「さしあたってゼニはなくても買えるとなれば、 これはゼヒ買おう、そうねアレも買いましょう、となりやすい。……いずれ返す『自分のゼニ』でありながら、なにかそうでないような錯覚におちいるから妙である」

 

 気がつけば、想定外の損失が増えています。帳簿の傷を消し去ろうにも、償却する体力もない。

そんな場合でも、まだ遅くはありません。原点に戻ればいいだけです。

 

 最善の経営とは、家計上手に通じるもの。他人に返すお金に頼るのではなく、他人に返さないでいいお金、つまり自分で自由に使えるお金を最大限に利用すればいいのです。『自分のゼニ』を使うのは、本業に徹するためです。

 

 借金から解放されて身軽になるのは、わずかの金でさえ、使い道に最大限の工夫を凝らしていた初心を取り戻すためであります。そこに至るまでの道は、平坦ではありませんが、幸いなことに未知の領域ではありません。もともと通過してきた地点なのです。

   

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